要約(先に結論)
- 枕・マットレス・アイマスクは睡眠の「質」を左右する重要因子。
- 枕の高さは6〜9cmが頸椎アライメントに最適(日本人成人対象研究)。
- 中硬度のマットレスは腰痛の改善と深睡眠の増加に有効 (Kovacs et al., 2003)。
- アイマスクと耳栓の併用は睡眠効率・メラトニン分泌を増加させる (Hu et al., 2010)。
- 個人差はあるが、科学的根拠に基づいた寝具選びが快眠の近道。
枕と睡眠の質
- 枕は頸椎アライメントと呼吸に直結。
- 日本人の成人男女を対象にした調査では、枕の高さが6〜9cmの群で最も頸椎カーブが安定し、入眠時の不快感が減少 (Matsumoto et al., J Physiol Anthropol, 2002)。
- 高すぎる枕は気道狭窄、低すぎる枕は頸部の緊張を引き起こす。
マットレスと腰痛・睡眠
- 無作為化比較試験で、中硬度マットレスは硬すぎる/柔らかすぎるものより腰痛が改善し、深睡眠が有意に増加 (Kovacs et al., Lancet, 2003)。
- 腰痛患者313人を対象に21日間使用したところ、中硬度マットレス群は硬いマットレス群に比べ、疼痛スコアが2倍改善。
中硬度の目安は、研究では「90kg荷重で22–27mmの沈み込み」。市販品ではニュートン値150〜200Nや、商品表示の「標準〜やや硬め」が近い。実店舗では無印良品の高密度ポケットコイルやニトリのNスリープ標準〜やや硬め系、予算を抑えるならエムールの180N系が狙い目。自分の体格・寝姿勢に合わせて肩や腰が落ちすぎず寝返りしやすいものを選ぶのがコツ。
アイマスクと耳栓の効果
- ICU患者を対象にした臨床試験では、アイマスクと耳栓の併用群でメラトニン分泌が増加し、睡眠効率も有意に改善 (Hu et al., Crit Care, 2010)。
- 健康な成人でも、暗所+遮音環境で徐波睡眠が増えることが確認されている。
科学的エビデンスからみた寝具選びのポイント
- 枕:6〜9cm前後を基準に、首がまっすぐ保てる高さを選ぶ
- マットレス:中硬度が腰痛改善・快眠に最適
- アイマスク・耳栓:暗く静かな環境でメラトニン分泌↑、睡眠効率↑
医師の監修コメント
臨床でも、寝具を変えただけで「眠りが深くなった」「腰痛が改善した」と訴える患者さんは少なくありません。睡眠薬よりもまず「眠れる環境を整える」ことが第一歩です。とくに ICUや不眠症の方では、アイマスク・耳栓の効果がエビデンスとしても確立してきており、誰でも実践できる快眠法といえます。
参考文献
- Matsumoto T, et al. The effect of pillow height on the cervical spine alignment. J Physiol Anthropol. 2002.
- Kovacs FM, et al. Effect of firmness of mattress on chronic non-specific low-back pain. Lancet. 2003.
- Hu RF, et al. The effects of earplugs and eye masks on sleep quality in ICU patients: a randomized controlled trial. Crit Care. 2010.


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