不眠症の種類と原因|ICSD-3/DSM-5の基準と3Pモデルで理解する【医師が解説】

睡眠
Silhouette depressed man sadly sitting on the bed in the bedroom, depression concept

要約(先に結論)

  • 不眠症は(赤線)「寝つけない/途中で起きる/早く目が覚める/熟睡感がない」(赤線)が週3回以上・3か月以上続き、日中機能に支障がある場合に「慢性不眠症」と診断される(DSM-5-TR/ICSD-3)。 Psych Central+1
  • ICSD-3では不眠症を(赤線)短期不眠症・慢性不眠症・その他の不眠症(赤線)に大別。慢性の第一選択治療はCBT-I(認知行動療法)睡眠医学アカデミー+1
  • 原因理解は(赤線)3Pモデル(素因Predisposing/誘因Precipitating/増悪・維持Perpetuating)(赤線)が有用。素因+ストレス発生+誤学習(長時間の寝だめ・ベッド内活動など)で慢性化。 PMC+1
  • 日本の疫学では、成人の不眠症状は約1〜2割の報告があり、年代・評価法で差がある。 PubMed+1

定義と診断の考え方

  • DSM-5-TR
    • (赤線)睡眠量や質への不満(入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒のいずれか)(赤線)
    • 3回以上3か月以上持続
    • 十分な睡眠機会があるのに眠れない
    • 日中の疲労・集中力低下・気分不調などの機能障害を伴う
      ※要点は患者教育向けまとめでも確認可。 Psych Central
  • ICSD-3(AASM)
    • 内容はDSM-5と整合。テキスト改訂(ICSD-3-TR)でも概念は踏襲。章ドラフトで定義が読める。 睡眠医学アカデミー+1

種類(分類)

  • ICSD-3
    • (赤線)短期不眠症(≤3か月)(赤線)/(赤線)慢性不眠症(>3か月)(赤線)/その他の不眠症。 睡眠医学アカデミー
  • DSM-5-TRの付記
    • エピソディック(1〜3か月)/持続性(≥3か月)/再発性などの経過で補足。 Psych Central

原因を整理する「3Pモデル」(Spielman)

  • 素因(Predisposing):体質的に眠りが浅い、(赤線)不安傾向・抑うつ傾向(赤線)、慢性痛、女性、高齢、家族歴。 PMC
  • 誘因(Precipitating):仕事・家庭の(赤線)急性ストレス(赤線)、手術・疾患、時差・交代勤務など。 PMC
  • 増悪・維持因子(Perpetuating)
    • (赤線)長い昼寝・週末の寝だめ・就寝/起床の揺れ(赤線)
    • ベッドでのスマホ・飲食・作業(条件づけ)
    • 入眠できない焦り→覚醒系の過活動(いわゆる過覚醒
      これらが**「眠れないから早くベッドに入る」**といった誤学習を固定化し、慢性化。 ペンシルベニア大学医学部

よくあるリスク要因・併存

  • 精神疾患(不安症・うつ病など)との併存が多い。 精神医学会
  • 身体疾患・症状:慢性痛、呼吸器・循環器疾患、胃食道逆流。
  • 睡眠関連疾患:睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群/周期性四肢運動。
  • 薬剤・嗜好品:カフェイン、ニコチン、ステロイド、抗うつ薬の一部、アルコールの離脱。
    (臨床では併存疾患のスクリーニングが必須)

どのくらい多い?(日本のデータ例)

  • 地域研究:成人の不眠有病率8.8%(多変量解析でストレス・抑うつが独立因子)。 PubMed
  • 包括的調査では「この1か月の不眠症状」**21.4%**などの報告(評価法で幅あり)。 Oxford Academic
  • 近年レビューでも、国内外で一過性〜慢性まで広く認められ、パンデミック関連の変動も。 sleepmedres.org

治療の第一選択:CBT-I(ガイドライン)


実践チェックリスト(原因への対処)

  • 就床・起床の固定(休日±1時間以内)—(赤線)睡眠機会を“適正化”し過覚醒を下げる(赤線)
  • 刺激制御:眠くなってから就床/20分眠れなければ一度離床/ベッドは睡眠と性行為だけ
  • 睡眠制限:ベッド内滞在時間を実睡眠時間+αへ段階的に調整(専門家の指導下で)
  • 夜の光・カフェイン・アルコールを控える/日中活動+朝光で体内時計を安定
  • ☐ 併存疾患(OSA・RLS・うつ/不安)の評価と治療

医師の監修コメント

不眠症は「眠れない夜」だけでなく、眠ろうと頑張るほど眠れなくなる誤学習が関わり、慢性化しやすい疾患です。原因を3Pモデルで分解し、睡眠機会の適正化ベッドの条件づけの是正を軸にすると、薬に頼らず改善できるケースが多くあります。まずは就床・起床の規則化刺激制御から始めるのが近道です。


参考文献

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