【医師が解説】睡眠とホルモン(メラトニン・成長ホルモン)の関係

睡眠

要約(先に結論)

  • メラトニンは暗さの合図で分泌され、**概日リズム(体内時計)の“夜”**を脳に知らせる。夜の強い光(特に短波長)は分泌を抑える。公的機関も「夜の光で抑制される」と明記。 NCCIH+1
  • 成長ホルモン(GH)は入眠後最初の深いノンレム睡眠(N3)に同期して大きなパルス分泌が起こる。睡眠が遅れるとピークも遅れる。古典的研究で詳細に示されている。 PMC+1
  • 実践ポイントは**「朝の光で体内時計を整え、夜は暗く・静かに」**。睡眠の質を上げることで、メラトニンの位相とGHパルスが整い、回復力が高まる。 NHLBI, NIH

メラトニン:体内時計の“夜”を知らせるホルモン

  • どこで作られる? 松果体。SCN(視交叉上核)が網膜→視床下部→交感神経を介して制御。 国立生物工学情報センター
  • 何をしている? 夜の到来を全身へ伝える“時刻信号”。分泌は暗所で上がり、光(特に短波長)で抑制。 NCCIH
  • いつ増える? 通常、就寝の2〜3時間前から立ち上がる(DLMO:dim light melatonin onset)。臨床・研究で位相マーカーとして用いられる。 MDPI

実践のコツ

  • :起床直後に屋外光(15分〜)で位相を前進・安定。
  • :就寝2時間前から照明を暖色・弱めにし、スクリーンはナイトモード遮光でブルーライトを減らす。 NHLBI, NIH

成長ホルモン(GH):深い睡眠に同期する“回復ホルモン”

  • どこで作られる? 下垂体前葉。
  • いつ出る? 入眠後最初のN3(徐波睡眠)に一致して1.5〜3.5時間持続する大きなパルスが観察される。入眠が遅れればピークも遅れる。被験者8名×38夜の連続採血・EEG同時計測で確認。 PubMed
  • 何に効く? 組織修復・代謝調整・筋骨格の回復など。深い睡眠を確保するほど、GHの生理的リズムが保たれやすい。

Takahashi Y, et al. Growth hormone secretion during sleep. 1968

実践のコツ

  • **就寝90分前のぬるめ入浴(約40℃ 10–15分)**で入眠初期のN3を促しやすくする(深部体温の下降を誘導)。
  • 寝だめより“毎日同じ就寝・起床”:最初のN3を安定化させ、GHパルスの位相をブレさせない。

メラトニンとGHを“活かす”生活設計(チェックリスト)

  • ☐ 朝起きたら屋外光15分以上。朝散歩がベスト。 NHLBI, NIH
  • ☐ 夜は照度を下げ、暖色照明に。就寝2時間前からスクリーンはナイトモードNCCIH
  • 就寝・起床の固定(休日±1時間以内)。最初のN3を安定化 → GHパルスも安定。 NHLBI, NIH
  • カフェインは午後後半以降を控える(睡眠潜時↑・総睡眠時間↓の可能性:EFSA)。 European Food Safety Authority+1
  • 就寝90分前に入浴→入眠初期の深睡眠を取り戻しやすい。

医師の監修コメント

臨床でも、夜遅い強い光でメラトニンが抑制され、入眠が遅れている例を多く見ます。入眠初期の深いノンレム睡眠を安定させることが、成長ホルモンの生理的パルスを保つ近道です。朝の光・就寝前の減光・規則的な睡眠リズムという基本をまず整えるだけで、回復感が大きく変わります。


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